突然だが私の実家は薬局である。
ザ・町薬局といった感じの薬局だ。
そんな町薬局の入り口付近には、必ずと言って良いほど置いてあるものがある。
そう、サトちゃん人形だ。
コイツ。
サトちゃんとは、佐藤製薬という製薬メーカーの公式キャラクターだ。
佐藤製薬自体あまり馴染みがないかもしれないが、代表的な製品は栄養ドリンクのユンケルシリーズだろうか。イチローがCMをやってるやつ。あとは風邪薬のストナとか?
見ての通り、サトちゃんは象をモチーフにしたキャラクターだ。Wikipediaによると象は長生き(健康)で幅広く愛されてる動物だから、という理由らしい。
しかし調べてみると象の寿命は70年ほど、日本人の平均寿命より10年以上短い。将来この差が更に開くことを考慮すると、モチーフをガラパゴスゾウガメや海綿動物に変更検討する余地がある。
また、公式キャラクターにはサトコちゃんというサトちゃんの雌バージョンも存在する。
そんなサトちゃん人形だが、もちろん私の実家の薬局にもあった。私が幼い頃からあったので、20年以上は置いていたのではないだろうか。
置いていた、なので今は置いてない。薬局は今も健在だ。じゃあどこに行ったのか。
時は10年以上前、私が実家を出る前のことだ。
実家の薬局の前には、サトちゃん人形を含め沢山の看板を置いていた。店じまいを始めると親父は看板達をシャッターの内側(店の中)に移動させ、シャッターを閉める。
ある日の夜、いつものように親父は看板を移動させ、シャッターを閉めようとしていた。しかしそのとき、サトちゃん人形の長い鼻が若干シャッターの外側に出ていたのだ。
勢い良く下ろされたシャッターはサトちゃんの鼻にクリティカルヒットした。
サトちゃん人形はプラスチック製。年数も経っていたので耐えられる訳もなく、サトちゃんの鼻は欠けてしまった。
ただ、粉々に欠けた訳ではなかったのでビニールテープによりサトちゃんの鼻は補修された。
まあ長い付き合いだからこういうこともあるよね、と言ってこの日は営業終了。
長い付き合いだからこういうこともある。
だからもう一度ある。
ある日の夜、いつものように親父は看板を移動させ、シャッターを閉めようとしていた。しかしそのとき、サトちゃん人形がシャッターの外側に出ていたのだ。
体の半分以上出ていたのだ。
勢い良く下ろされたシャッターはサトちゃんの脳天にクリティカルヒットした。
サトちゃんは殉職した。
20年以上薬局の店頭に立ちお客様を見守り続けたサトちゃんは、店主の一撃(二撃)によりその生涯を閉じたのであった。
サトちゃんの亡骸はしばらく店の裏で保管(放置)されていたが、私が実家を出た後いつの間にか無くなっていた。
生前のサトちゃんの写真は携帯には入っておらず、斬首されたものしか残っていない。
だからこそ私は本ブログのアイコンをサトちゃんの亡骸に設定し、あの頃のサトちゃんに想いを馳せるのであった。